俳句スクエア集・平成 28 8月号

           通 巻 116

 

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  海鳴りの彼方の母やかき氷         朝吹英和

  遠き日の砂の記憶や雲の峰

  炎昼や依り代宿る幹太し

 

  海底を歩く諸人油照り           服部一彦

  光琳の川を這い出る蟇蛙

  渡し賃一枚足らぬ夏の夢

 

  蛸壺へ蛸血溜りのように這う        加藤昌一郎

  長き長き滝の背中の力瘤

  大理石の王女唄えり薔薇の声

 

  ランドセル選び切りたる玉の汗       十河智

  夏の日のこの片田舎この工房

  叫騒のランドセル店六月尽

 

  中心に磐座のある大夕焼          石母田星人

  山百合の色香の中を火星かな

  羽抜鶏己が影より抜けだしぬ

 

  ヴァーチャルの月の李白と酌み交はす    大津留直

  仮死に生れ月光に読む『ヨブ記』かな

  おほどかに地霊の笑ふ爆心地

 

  背を割れば空蝉のなか大海に        真矢ひろみ

  素因数分解するぞ青田風 

  引き籠る三十余年夜の虹

 

  海神の吐息が揺らす夏帽子         今井みさを

  紫陽花の色そのままに毬零す

  白砂を踏めば足裏の涼しかり

 

  月光に身を任せ浮く西瓜かな        松本龍子

  蜩は山の音また空の音

  初盆会ふところの蝶ひかりけり

 

  風死してでかい男のセレナーデ       石川順一

  冷酒や仮面ライダー龍騎見る

  夜濯や寝る人の服はピンク色

 

  田に戻る風とやんまやたそがるる      毬月

  逢ひたくてぶつかり合って茄子の花

  また今朝も我より先にかなかなや

 

  ためらいてひらり離れる揚羽蝶       於保淳子

  梅雨空を割いて青色海かなた

  万緑の朝の香りや幼き日

 

  雲の国旅してきたりカブトムシ       山田紗由美

  梅雨明けや石垣は風わたしけり

  明治よりつづく扉や夏館

 

  雲の峰若さとちがふ力湧き         松尾紘子

  忘れしこと思ひ出したり冷奴

  ポケモンを捕えて夏の夜は更けて

 

  河童忌の日曜にあした来る人        干野風来子

  行水や妣たちの国はそら色

  香水瓶の闇よりシェエラザード現る

 

  百日紅心の空を埋めにけり         石田桃江

  仙人掌の花のめざめる月夜かな

  分身の覗いていたる夏の淵

 

  水鉄砲当たって消える放物線        加藤直克

  頂門の一針夏至の日矢刺さる

  東雲の色に染まりて蓮開く

 

  みつ豆の心ゆくまで蜜かける        珠雪

  紅い実を全部頂戴巴旦杏

  夕立のせいにして又近づきぬ

 

  金龍の寝息に寺に五月雨るる        五島高資

  電線を越えてや一本松炎ゆる

  黄金なすはちすに星の位かな

 

                             句稿到着順

 

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 次回、「俳句スクエア集」平成289月号の締切は、平成28820日です。

同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛 へ題名に「9月号投句」と

明記の上、ご投句下さい。題名のない場合は不掲載の場合があります。

 新規にご参加希望の方は、まず「俳句スクエア」同人・会員へご参加下さい。

編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、

「俳句スクエア」参加希望と題してお申し込み下さい。

 

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