俳句スクエア集・平成 28年 7月号
通 巻 115号
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荒梅雨や攻勢強きハ短調 朝吹英和
水鏡青葉雫のご乱心
尺八の一音成仏枇杷熟るる
花氷時一様に五十年 十河智
黙祷す黄泉の友をり五月闇
夏の夜の老境語る二分ずつ
一山の傾いてゐる藤の花 石母田星人
なほ奥へつづく径ある蛍かな
尺蠖の這ふ北斎の波のうへ
高原の泉なりけり星の声 大津留直
死にもする神の飛沫や枇杷熟るる
捨ててこそおのづからなる夕端居
海亀が息こぼしたる夕べかな 山田紗由美
あぢさゐやひと玉だけを授かれる菜
いずこより神のこよりか楠若葉
雨はまだ空に預けて半夏生 毬月
饅頭の寺とは知らず風薫る
雨音に白濃くなりし半夏かな
走り根が夏の鞍馬を吸ってをり 加藤昌一郎
足跡も残さず去りし立葵
猫町の今宵は冥王忌の夜店
短夜やそしてしづもる魚の鰭 今井みさを
夏なれやわたつみ風を引き連れて
黒潮の風真つ向に花でいご
はくれんに抜き差しならぬ青い空 真矢ひろみ
素因数分解するぞ青田風
引き籠る三十余年夜の虹
隧道の先に待ちたる大西日 片山和恵
夏つばめメニューお任せピッコロカフェ
梅雨間より陽の射して川霧立ちぬ
真夜中の遺書読んでゐる晩夏 松本龍子
線香の先端にある晩夏かな
がはがはと夏が流れる晩夏かな
湖の底へ青き陽の射す五月尽 於保淳子
ハーブ園ひらり揚羽の舞い来たる
万緑の朝の香りや幼き日
星雲のそこより生れし蝸牛 加藤直克
点滅の縁の川を蛍舟
むらさきを日に投げ返す初茄子
ジョセフィーヌの溜息かダリア紅きに 松尾紘子
時間など気にせぬ暮し夏至ゆふべ
垣根越しの母の日傘や避病院
新茶汲み母は遠くに雨を聴く 干野風来子
天草とる海女の磯笛哀しけれ
恋衣はした色して花樗
光琳の川を這い出る蟇蛙 服部一彦
路地中は子らの戦場麦の秋
いつの間に白雲夏を連れて来し
さざなみのさざなみに逢ふ涼氣かな 内藤倫子
狛犬の阿が目を奪ふ夏の空
一湾を翔るに易し夏燕
白蛾死ぬメニューの後ろの暗みかな 石川順一
酢飯より白米食べる蓮咲く
大粒の梅雨の雨にときめきぬ
初物の胡瓜分け合ひ距離保つ 石田桃江
潮の香の満つるや胸に青葉梅雨
紫陽花や挫ける老ひを教授せり
ででむしや葉先巧みに引き返す 堀川珠雪
朝もやに葉先尖らす菖蒲かな
短夜やペン先掃除完了す
うつせみへ通ふ風あり薪能 五島高資
馬鈴薯の花やバス停まで少し
東京と江戸を泳げる緋鯉かな
句稿到着順
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次回、「俳句スクエア集」平成28年8月号の締切は、平成28年7月20日です。
同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛
に「8月号投句」と
明記の上、ご投句下さい。
新規にご参加希望の方は、まず「俳句スクエア」(同人・会員)へご参加下さい。
編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、
「俳句スクエア」参加希望と題してお申し込み下さい。
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Copyright
(C) Takatoshi Gotoh
1998.3.1