俳句スクエア集・平成 285月号

           通 巻 113

 

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  半世紀戻り讃岐の花の山          十河智

  春愁やつい次はどこ次はいつ

  春の夜の夢の中にてなゐ震りぬ

 

  漢方薬飲んで葉ざくら以後のこと      瀬川泰之

  余白を生きるお前桜など見て

  地震が来てこの島揺らす花の過ぎ

 

  白色レグホーン八方に散る春の闇      服部一彦

  紫雲英田の蛇口開いて星放つ

  媼らが声を揃えてさくら咲く

 

  金箔をふるはせてゐる春の星        石母田星人

  初蝶の零してゆきぬ夜のかけら

  これからを問はれてをりぬ桜餅

 

  千年の砂紋に育つ光る風          真矢ひろみ

  逃水の逃げ切るあたり銀の匙

  別の世に半身翳す朧の夜

 

  御影供や池の真中に日の満ちて       今井みさを

  すぢ雲の裳裾を濡らす春の海

  春深しつぎつぎ灯る繭の里

 

  春暁やウランガラスの光と陰        片山和恵

  生命の木々の芽吹きや天地の歌

  ほんのりと木霊宿るや桃の花

 

  点滴と連弾するや卯の花腐し        松本龍子

  引くことはかへりくること春の海

  夏祭父の背中をもちかへる

 

  春光や新聞取りに風起こす         石川順一

  柴桜スパゲッティーを食べに行く

  花祭橋に名前と歴史あり

 

  力水で顔を洗ったシャボン玉        加藤昌一郎

  棒高跳び鬼の結界見て帰る

  鏡から蝶発つ朝はモーツアルト

 

  おごそかに卯の花腐しよぎりけり      大津留直

  地底より湧けるバッハや春の水

  ひじりゑの遊行もはらの裸かな

 

  新採用教師の声や木の芽時         堀川珠雪

  晩春や一両編成混み始む

  この辺で正体明かす猫の恋

 

  瞑想のハープに螢明滅す          朝吹英和

  低弦に兆す死の影青葉闇

  軍神の怒りに触れし青蜥蜴

 

  不可能を信じない人桐の花         干野風来子

  春満月のうらにまはりて愛し合ふ

  もどること出来ぬ菜の花明かりかな

 

  桜蘂髪に降らせて忌を修す         松尾紘子

  廻廊の床きしと鳴り花冷えす

  饅頭の皮が手に付き春雷す

 

  春日差し顔半分の白さかな         於保淳子

  老桜枝垂るるほどに静かなり

  石段の森は黙せり山桜

 

  篠の子の嫋々たるやパンの笛        加藤直克

  航跡を隠して卯の花腐しかな

  散りゆけるままに桜の川となる

 

  表札は父の名のまま白躑躅         内藤倫子

  黒電話のカバー取り替へ昭和の日

  タブレット翳しゆく古都夏隣

 

  古本を花ふぶき浴び運ぶなり        石田桃江

  弁当に花びらひらり舞い降りて

  片足は地に片足は木下闇

 

  切り株に花びら一つ青き踏む        山田紗由美

  遠きより光りとなりて諸葛菜

  爪ほどの青梅や空に生れるとき

 

  み空よりしだれ桜のさくなだり       五島高資

  花の奥なる宇都志国玉主神

  花に寝て天に近づく瀬音かな

 

                             句稿到着順

 

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 次回、「俳句スクエア集」平成286月号の締切は、平成28520日です。

同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛 に「6月号投句」と

明記の上、ご投句下さい。

 新規にご参加希望の方は、まず「俳句スクエア」同人・会員へご参加下さい。

編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、

「俳句スクエア」参加希望と題してお申し込み下さい。

 

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