俳句スクエア集・平成 28年 4月号
通 巻 112号
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春めくや宇宙へ続く歯みがき粉 毬月
立ち止まる風と曲がりし春鞄
つちふるやいつものように並ぶ列
春泥に足を取られて里に這う 瀬川泰之
諸々の芽と目が合える春土かな
同級会花弁の如く一並び
あの子だけ木の尖にゐて春の山 服部一彦
何の寝息草木塔に春深し
いつの間に雲は連なる春の空
初蝶の去る鑑真のまぶたかな 石母田星人
あふむけにねむりゐる春霞かな
春風のなかにときどき骨の音
逃水となりゆく渋谷交差点 松本龍子
桜餅一葉背負ひてまるまれり
養花天皺にかくれた象の眼
朧夜の産土息吹く気配かな 真矢ひろみ
心根は虚空半身春泥に
路地奥に辛夷咲きをり擬態めく
養花天引きこもる日の蜜の味 加藤直克
引鶴の大地の傷を嘗めてゆく
逃げ水に浮かぶ楼蘭ロプノール
春北斗小川に音の戻り来ぬ 内藤倫子
陽の中へ古木伸びゆく彼岸かな
いにしへの運河へ菜花零れけり
石段を御座に雛は海眺む 今井みさを
海よりの東風が撫でゆく石仏
姫神を目指し山火は頂に
掃除機が準備だけされあたたかし 石川順一
芽吹き行くデジタルカメラの黒画面
液体が廊下を洗ふ水温む
アトリエは山遥かなり雪残る 於保淳子
梅が香や昔心地の城の跡
苔むすや石のひとつに春の風
囀りに文法のあり草の原 生田亜々子
春光に埃ゆつくり漂つて
春風やあと数日の今年度
アポロンの琴に触るるや飛花落花 大津留直
畦塗るや最上段は晴れの空
静けさを包みこむるや山葵漬
手をつなぐ花の団居の下を行く 加藤昌一郎
含羞は人にも木にも桜月
凛凛と贔屓の桜立ってをり
雛飾る京の一膳飯屋かな 十河智
隣家より金木犀の香しき
奪はれて母恋ふ海となりにけり
ラッパズイセン風と光に元気なり 石田桃江
夕闇の迫りくる梅真白なり
春の色の花のふえてやウォーキング
春満月真白き象のうずくまり 山田紗由美
丹田に掌置きて山笑ふ
丹田に気の戻りたる五色水
幾何学のノートの手垢春の雲 堀川裕貴子
初桜いよよ荷造り取り掛かる
花蘇芳さらり愚痴などこぼし合ふ
記憶なき海へムスカリ立ちて青 干野風来子
海市立つ文旦飴をふくみては
暮れてなほ白木蓮の仄あかり
飛行船ぽつかり浮かび春田打つ 松尾紘子
骨董屋の秘仏てらてら春しぐれ
安曇野の旅果てのそら柳絮舞ふ
シャンデリア泡立つホール四月来る 朝吹英和
神楽坂振り合ふ袖に櫻散る
飛花落花思ひさまざま石の道
手の甲に掌を置く朧かな 五島高資
水音を留める筆や人麻呂忌
春の星めぐりて旅をする木かな
句稿到着順
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次回、「俳句スクエア集」平成28年5月号の締切は、平成28年4月20日です。
同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛
に「5月号投句」と
明記の上、ご投句下さい。
新規にご参加希望の方は、まず「俳句スクエア」(同人・会員)へご参加下さい。
編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、
「俳句スクエア」参加希望と題してお申し込み下さい。
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Copyright
(C) Takatoshi Gotoh
1998.3.1