俳句スクエア集・平成 283月号

           通 巻 111

 

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  雪の果ひとひら鯉をそめにけり       松本龍子

  初蝶は披露宴までいくといふ

  春雷の奥千本を走る音

 

  江戸はるか毘沙門様に春の音        朝吹英和

  明鏡や俵重ねし白壽春

  ぶらりゆく兵庫横丁春うらら

 

  極寒に昭和元年生まれ逝き         十河智

  はしやぐ声南の島に霙降る

  雪女郎偏西風を馭するらし

 

  なゐの後臥床さみしき春の朝        服部一彦

  寒明くるエレベータは人を吐く

  春寒し透明に行くエレベータ

 

  全身を水に委ねて春の星          石母田星人

  うぐひすや天心に星そだちをり

  うすらひは水の脱皮のかたちかな

 

  桜貝四十億年の恋ごころ          大津留直

  雪の果夕陽の果のうすあかり

  牛のごとのそり来りて独活を掘る

 

  白菜のもえぎを今日の糧となす       石田桃江

  きさらぎや日日が薬や楽になる

  兆すもの数多くある二月かな

 

  目をこすり糸遊さらに定まらず       加藤直克

  薄氷の解くるを待たず祖父逝けり

  紅梅を空のまほらにピン留めす

 

  脇柱に寄りて生涯ほぼ麗ら         加藤昌一郎

  逃水の脚は痙攣してをりぬ

  ババロアに漣立てて春一番

 

  万象とわたくし揺れる雪ねぶり       真矢ひろみ

  染み濡れるダム堤体や水の春

  風光る遠い昔の星のこと

 

  舌先の口内炎や寒戻る           石川順一

  お茶の葉を粉にして飲む余寒かな

  検索のバーの変化や浅き春

 

  勘違ひしたままでよし冬終はる       生田亜々子

  検索に引つかからない春の雪

  なにもない日から忘れて春の風

 

  ふらここや私に私が従きゆかぬ       内藤倫子

  菜の花の先の秘密の邸かな

  早春や五面の窓の異人館

 

  山の端の途切れ二月の滝の音        今井みさを

  山鳥の背に春の雪ひとひら

  恋猫やふはりふはりと隣家の灯

 

  まんさくの空へふくろびては二人      干野風来子

  おとなしきうぐひす餅のしぐさかな

  憐憫の光にぬれて春満月

 

  黙して二人シリウスの瞬きに        松尾紘子

  山幾重墨絵のごとく西行忌

  空箱は叩いて潰す四温の日

 

  人の世は狂ふばかりや久女の忌       桑本栄太郎

  鳰潜く己がうき身を惑ひつつ

  一羽飛びみな翔び去りぬ寒雀

 

  落ちてなほ水に咲きたる椿かな       五島高資

  けむり立つまでをたゆたふ椿かな

  渋滞の灯の流れ出す春の星

 

                             句稿到着順

 

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 締切は、平成28220日でしたが、まだ投句されていない同人の方は、

平成283月上旬までに投句して頂けましたら逐次掲載致します。

 あるいは、投句したにもかかわらず未掲載の場合は、恐縮ですが、編集部宛

へ再投句をお願い致します。

 

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 次回、「俳句スクエア集」平成284月号の締切は、平成28320日です。

同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛 に「4月号投句」と

明記の上、ご投句下さい。

 新規に参加ご希望の方は、まず「俳句スクエア」同人へご参加下さい。

編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、

同人参加希望と題してお申し込み下さい。

 

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