俳句スクエア集・平成 28年 2月号
通 巻 110号
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北風や人語解せぬビルばかり 加藤昌一郎
枯れきって雲を噴き出す地平線
死にに来た冬蜂に伽藍広すぎる
踏絵板阿吽の呼吸まとひけり 松本龍子
うぐいすは月の溜息かもしれず
鶯の空から白い波が来る
松過ぎて星のいとなみ己がじし 服部一彦
人日やそつぽ向いても来る電車
小三に向かふ敵なし歌加留多
過疎進む兎の島や猫の島 十河智
弾き初めに聞き覚えける君が代を
お年召す天皇誕生日の陛下
地の果ての少年兵の聖夜かな 真矢ひろみ
冬銀河異教の街の傾げゆく
死は母の貌もつと云ふ骨正月
年の瀬や山が吸ひ込む水の音 今井みさを
去年今年八重九重に響く笛
行く年に八咫の太鼓の鳴り止まず
星空へ反つくり返る初暦 石母田星人
次の間に龍のこゑする淑気かな
足下に闇の流るる初詣
波の声生きよと響動む踏み絵かな 大津留直
母の梅咲きて蠢くしじまかな
火山島いや黒々と余寒かな
ストーヴの上で煮らるる豆の息 石川順一
雪降るを見ずに選句に勤しめり
大寒や甘露煮千円以上して
スクラムを膝立ちで待つラガーかな 生田亜々子
風邪の子の妙に清々しい笑顔
積もらない雪美しく窓の外
小走りに従いて行く道姫椿 内藤倫子
たしかなる瀬音葉音や冬の川
巡り来て裏桜島冬の蝶
柏手の間を星の飛ぶ初詣 加藤直克
胸はたけ乳含ませる初御空
闇に研ぐ恋の刃やどんど焼き
ベンガラの上弦の月冬の街 片山和恵
凍星やここよここよと母の声
初雪の足あと一つおいてをり
梅月夜大風呂敷を広げたり 朝吹英和
亜麻色の髪梳く少女深雪晴
死を想ふひととき冬の薔薇光る
暁や初富士を背に伸びをする 於保淳子
ぽつぽつと街の明かりや日脚伸ぶ
冬うらら昔語りの途切れなく
羽子板の申が跳びだす散歩道 毬月
三度目の願い事かな冬銀河
また同じ会話はじまり蜜柑かな
水仙の葉先正しく捻くれて 堀川珠雪
角巻や嘘も正義も覆ひたる
腕時計ちらとも見ずに大試験
暗闇に少しはなれて雪の闇 石田桃江
侘助に痛みの愚痴をあずけたる
あおあおと指先に摘む若菜かな
昨夜の雪むらさきの山がひっそり 干野風来子
初空に生きぬくことは冒険と
あらたまの年の夜に聴くシベリウス
あらたまの年経りにては床の塵 松尾紘子
壮麗なシンフォニーのごと冬夕焼
鎮魂の焔の幾万や巴里冷ゆる
取りよろふ林や浅間山眠る 五島高資
冬川の渦のほどける光かな
シリウスやマンホールからけむり立つ
句稿到着順
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締切は、平成28年1月20日でしたが、まだ投句されていない同人の方は、
平成28年2月上旬までに投句して頂けましたら逐次掲載致します。
あるいは、投句したにもかかわらず未掲載の場合は、恐縮ですが、編集部宛
へ再投句をお願い致します。
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次回、「俳句スクエア集」平成28年3月号の締切は、平成28年2月20日です。
同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛
に「2月号投句」と
明記の上、ご投句下さい。
新規に参加ご希望の方は、まず「俳句スクエア」同人へご参加下さい。
編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、
同人参加希望と題してお申し込み下さい。
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Copyright
(C) Takatoshi Gotoh
1998.3.1