俳句スクエア集・平成 28年 1月号
通 巻 109号
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乗り越した街で狐に摘まれる 加藤昌一郎
義仲忌ギプスの下の空っ風
もの枯れる音で始まるシベリウス
山茶花や輪の中に生き楕円形 瀬川泰之
埴輪は兵士の姿霜柱
冬木立放射線状テロの散り
冬ぬくし二人の若き音楽家 十河智
ヴァイオリンの音の凍みにけりバルトーク
ヴィヴァルディ四季冬の章十二月
雪嶺の雪ひきのばす月の水 松本龍子
初日の出海もかすかに動きけり
襟巻のかたちになつてねむりたる
光背の後ろを廻る寒北斗 石母田星人
一心に星をあつむる大根穴
水の束ほどきつづける年の暮
山間に旬を探してきのこ汁 今栄子
ヘアピンのカーブを走る紅葉狩り
落ち葉して朝日を浴びる烏かな
老蝶は近づき過ぎても無言 服部一彦
花萩を半分刈って地球回す
歳晩のポストかき混ぜ男ゐる
汝が内の蝋燭ひとつクリスマス 大津留直
陽のあたる窪地の真中ふゆざくら
水彩の余白匂へる初日かな
弓張って凍月赤を極めたり 今井みさを
水尾に水尾重ねて鴛鴦の池動く
柏手の揃ひて仕舞ふ今年かな
雪をんな深夜に皿を洗ひけり 生田亜々子
数へ日の空の遠くに飛行船
栞紐引けば始まる師走かな
小六月三女神舞ひ厳島 片山和恵
山裾の冬の女神や淡き息
岩肌に絹掛の滝冬の苔
みんなみの小伊勢の今を冬紅葉 内藤倫子
口癖は綺麗と素敵冬林檎
息白くムーミン谷の点呼かな
柚子風呂や風呂蓋疎ましき真夜に 石川順一
鋤焼や御菓子の後はシュールなり
ストーブで毛を焼く過去の無聊かな
額縁の首枷抜けし冬の蛇 朝吹英和
悲しみの水平線に冬陽落つ
精霊の囁く森に淑気満つ
男体と女峰相和し冬日燦 加藤直克
おのがじし空を背負いて冬の浜
細枝に光集めて寒雀
すれちがう美男かづらに夢ごこち 石田桃江
寒空の万両あかり灯しけり
薬喰健康寿命延びるかな
粕汁やはるか海鳴り聞こえをり 桑本栄太郎
億万の水の命や冬の星
ごつごつと胸に背に浮く柚子湯かな
渡良瀬の水に寂たる冬の網 干野風来子
水瓶にあふれし無為の星供かな
つらつらと南天の実の未来かな
別れ来て鼻先がつーんと冷たい 松尾紘子
天平の陽の色に透くつるし柿
木の瘤のひそひそ話寒夜また
渡り終へし金の飛脚や冬銀河 山田紗由美
牛の舌はつはつ煮たる漱石忌
こんにゃくのねぢり具合や姫はじめ
学び舎の次の百年冬木立 堀川珠雪
鯛焼に列なす男子高校生
初霰弾く地面のタンバリン
寒鰤を切りて海へとつながれり 於保淳子
犬同士あいさつかわす初日の出
まぶた閉じ並ぶ石像雨季の国
空き缶に歪なる風冬館 毬月
臆病な背中溢れて冬銀河
戻りくる時は消えゆき柚子湯かな
潮の目に冬の日の入る相模かな 五島高資
狐火や列車は遅れつつ走る
冬銀河うからやからの音すなり
句稿到着順
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締切は、平成27年12月20日でしたが、まだ投句されていない同人の方は、
平成28年1月上旬までに投句して頂けましたら逐次掲載致します。
あるいは、投句したにもかかわらず未掲載の場合は、恐縮ですが、編集部宛
へ再投句をお願い致します。
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次回、「俳句スクエア集」平成28年2月号の締切は、平成28年1月20日です。
同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛
に「2月号投句」と
明記の上、ご投句下さい。
新規に参加ご希望の方は、まず「俳句スクエア」同人へご参加下さい。
編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、
同人参加希望と題してお申し込み下さい。
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Copyright
(C) Takatoshi Gotoh
1998.3.1