俳句スクエア集・平成 2712月号

           通 巻 108

 

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  霜月やヒマラヤ杉の幹締まる         朝吹英和

  姫宮の寝所を守るいたちかな

  涙こそ女の武器ぞ銀狐

 

  差羽果つ十一月の同心円           服部一彦

  青星やドンガン進む兵馬俑

  狂ほしく十一月の納骨堂

 

  身震いする美味しさ風を噛む芒        加藤昌一郎

  稲妻のいなせに妻は首っ丈

  六道載せこの星憩う処なし

 

  高野山下りて奈良に柿を買ふ         十河智

  澄む秋の高野名のあるごま豆腐

  際立ちて秋明菊はピンクなり

 

  大銀杏全て裸木となりて立つ         瀬川泰之

  ブルドーザー全身に錆冬に入る

  ワイパーの誤作動のよう初時雨

 

  オリーブの受くる海風冬の月         大津留直

  宇宙より受難曲鳴る大根干

  歩行器の軋み身に沁むゆふまぐれ

 

  幣張りし古の磐芒原             歌代美遙

  少し羨し真砂女の恋路夕時雨

  炉話に恋路をぽろり恩師かな

 

  霧島へ向かふ心の紅葉かな          内藤倫子

  滞空の釣銭籠や蜜柑買ふ

  真つ先の鶴瓶落としや黒神村

 

  北に川鴨は流れに漂へり           石川順一

  山眠る石段登れば鐘が鳴る

  お菓子食べカルピスを飲む冬浅し

 

  天体のざわめいてゐる蔓たぐり        石母田星人

  銀漢の叫び蕎麦殻枕より

  生と死のあはひのにほひ蔦紅葉

 

  胸のすくやうに揚がりし柿花火        堀川珠雪

  踏み分けて取り逃したる茸かな

  小春日や引き戸からりと漆器店

 

  古書の背に光のとどく冬座敷         加藤直克

  霜月という空き腹を抱えおり

  武者どもにいのち託され冬の蜂

 

  朝霧の晴れ島々の目覚めかな         石田桃江

  雨に濡れはんなり白き花八手

  朝日さすゆっくりさめる紅葉かな

 

  石垣をつつつつ走る蔦紅葉          桑本栄太郎

  ねこじやらし風の言いわけ聞いてをり

  あふられて風のとりこや秋の蝶

 

  集めては秋気放てる神の岩          今井みさを

  風がゆくそしてほろほろ零余子飯

  秋日濃し神のいちやうに更に濃し

 

  月冴ゆる老いた乳房を照らしけり       松本龍子

  コンビニから出て走りだす年の暮

  寒昴ガンマナイフのレントゲン

 

  三毛猫の白の部分に冬来る          生田亜々子

  しぐるるやバイパス沿いの灯の滲む

  装飾音綺麗に入る虎落笛

 

  海かもめ想いめぐらせ温もりに        山地真斗紀

  空と海波間に求む神世あさ

  老い行くは時の流れの夢日読む

 

  秋冷や文読む背に茜さす           毬月

  糊と紙繋げて綴じて除夜の鐘

  寺の鐘鳴り止むまでの朧月

 

  朝しぐれなれば旭の三和かな         干野風来子

  天恵の空へ朝日のとけし冬

  此の山に咲いて愛しき冬桜

 

  閑かさや紅葉かつ散る師の句碑に       松尾紘子

  微笑みて常世の木の実翳しては

  鎮魂の炎の幾万やパリ冷ゆる

 

  凩や閻魔の喝の真くれなゐ          山田紗由美

  竜の玉金輪際を照らしけり

  滴一滴つららの音の散りにけり

 

  一陣の風に流され谷もみじ          片山和恵

  君の背に濡れたる五指の冬紅葉

  冬の陽の映し鏡に君がいた

 

  目をこする月天心の底ひかな         五島高資

  芭蕉破れて肚の底まで日の沁みる

  穭田の尽くるところや男体山

 

                             句稿到着順

 

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 締切は、平成271120日でしたが、まだ投句されていない同人の方は、

12月上旬までに投句して頂けましたら逐次掲載致します。

 あるいは、投句したにもかかわらず未掲載の場合は、恐縮ですが、編集部宛

へ再投句をお願い致します。

 

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 次回、「俳句スクエア集」平成281月号の締切は、平成271220日です。

同人の方は、3句(雑詠・既出句可)以上を、編集部宛 に「1月号投句」と

明記の上、ご投句下さい。

 新規に参加ご希望の方は、まず「俳句スクエア」同人へご参加下さい。

編集部宛 に、氏名(俳号可)、住所(都道府県)、所属結社(あれば)を明記の上、

同人参加希望と題してお申し込み下さい。

 

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