競ひ合ふお面被りや雲の峰 朝吹 英和
幽明の境に眠る青葉木菟
少年の足裏に戻る夏の川 ☆
大岩を割る青蔦のうねりかな ☆ 真矢ひろみ
胞衣を裂く大音響のいなびかり
深呼吸したいほどする木下闇
鯉色の水に鯉ゐて朝曇 ☆ 服部 一彦
さなきだにツリーは孤独梅雨深し
牛の背にゆらり揺られて月の涯
凌霄花をみなのおしゃべり果てしなき 小島 文香
山梔子の魅惑の香り夕闇に
落とし文亡き娘の綴りやも知れず ☆
水平に天飆を呼ぶ牡丹かな ☆ 石母田星人
小満の犀の意のまま蝕進む
全身に朝を乗せたる夏の蝶
流灯会星のけむりをみなそこに 松本 龍子
終戦日手元によせてバット振る ☆
生身魂震える風を聴きにゆく
梅雨曇改定率を学習す 石川 順一
七月は右の肩甲骨に手が
我が手から氷菓奪ひて去って行く ☆
昼寝して携帯は手の中にあり 生田亜々子
ヨーヨーは伸びきったまま午睡へと ☆
思うより深き水底泉汲む
晩鐘に凌霄の花散りにけり 前田 巍
突然の他人の顔や夏の月 ☆
晴天に糸ひく雲や原爆忌
花樗そのむらさきの鎮魂歌 大津留 直
夏川に一点白き芥かな ☆
寂けくも月の破片の瓦礫山
捩花の雲立ち上がる狭庭かな 加藤 直克
薔薇の香に歩みひそめる風のあり
木漏れ日をしずかに鳴らす苔の花 ☆
空襲より貧しく終わる川開き ☆ 加藤昌一郎
バラを嗅ぎ眼開ければ猫町の中
鰓なくて蛇炎天に人と棲む
七夕の病室までの数歩かな 毬 月
朝顔に水を与える写生かな ☆
苦悩より苦悩生れたる熱帯夜
青蔦を引きちぎりたい窓でした 鈴木 浮葉
死ぬまでをどう生きやうか茄子の花
草いきれ戻らぬ夏をむせぶかな ☆
竜灯やムー大陸から波寄せる 五島 高資
星屑のいわおとなりて松葉散る
竜淵に潜み硯の海となる
原則として句稿到着順。 ☆は、五島高資推薦句。
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平成27年5月20日までに 俳句スクエア編集部 までお送り下さい。
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