俳句スクエア集・平成 24 年 8 月号

通 巻 101 号



    競ひ合ふお面被りや雲の峰          朝吹 英和
    幽明の境に眠る青葉木菟
    少年の足裏に戻る夏の川 ☆


    大岩を割る青蔦のうねりかな ☆       真矢ひろみ
    胞衣を裂く大音響のいなびかり
    深呼吸したいほどする木下闇


    鯉色の水に鯉ゐて朝曇 ☆          服部 一彦
    さなきだにツリーは孤独梅雨深し
    牛の背にゆらり揺られて月の涯


    凌霄花をみなのおしゃべり果てしなき     小島 文香
    山梔子の魅惑の香り夕闇に
    落とし文亡き娘の綴りやも知れず ☆


    水平に天飆を呼ぶ牡丹かな ☆        石母田星人
    小満の犀の意のまま蝕進む
    全身に朝を乗せたる夏の蝶


    流灯会星のけむりをみなそこに        松本 龍子
    終戦日手元によせてバット振る ☆
    生身魂震える風を聴きにゆく


    梅雨曇改定率を学習す            石川 順一
    七月は右の肩甲骨に手が
    我が手から氷菓奪ひて去って行く ☆


    昼寝して携帯は手の中にあり         生田亜々子
    ヨーヨーは伸びきったまま午睡へと  ☆
    思うより深き水底泉汲む


    晩鐘に凌霄の花散りにけり          前田 巍
    突然の他人の顔や夏の月 ☆
    晴天に糸ひく雲や原爆忌


    花樗そのむらさきの鎮魂歌          大津留 直
    夏川に一点白き芥かな ☆
    寂けくも月の破片の瓦礫山


    捩花の雲立ち上がる狭庭かな         加藤 直克
    薔薇の香に歩みひそめる風のあり
    木漏れ日をしずかに鳴らす苔の花 ☆


    空襲より貧しく終わる川開き ☆       加藤昌一郎
    バラを嗅ぎ眼開ければ猫町の中
    鰓なくて蛇炎天に人と棲む


    七夕の病室までの数歩かな          毬 月
    朝顔に水を与える写生かな ☆
    苦悩より苦悩生れたる熱帯夜


    青蔦を引きちぎりたい窓でした        鈴木 浮葉
    死ぬまでをどう生きやうか茄子の花
    草いきれ戻らぬ夏をむせぶかな ☆


    竜灯やムー大陸から波寄せる         五島 高資
    星屑のいわおとなりて松葉散る
    竜淵に潜み硯の海となる


   原則として句稿到着順。  ☆は、五島高資推薦句。


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平成27年5月20日までに 俳句スクエア編集部 までお送り下さい。


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