残菊の垣に歩行器沿はせ行く 大津留 直
鬼の眼の虚(うろ)にさやけき秋の風 ☆
鈴掛の落葉一枚王の面
銀のサロメの棺月凍る 朝吹 英和
色事を弓手に隠し木賊刈る
木琴を叩きのめして猪走る ☆
かまどうまいのちにふれる髯の先 加藤 直克
一音の消えゆくはての冬銀河 ☆
数珠玉を鳴らして京(けい)に及ばざる
肩車重ね銀河へ行くサーカス ☆ 加藤昌一郎
裏富士のせいか秋意のひたひたと
桃割く時怖くないのか妻よ
伯父捜す遺体安置所冴返る 石母田星人
天体を溢れだしたる蝶の骨
死に至る柱時計を出る西日 ☆
霜月やこんなに太る綿ぼこり 生田亜々子
一言に罪はなけれど冬灯
携帯を構えられては冬薔薇 ☆
月光を噴き上げている鞍馬杉 ☆ 松本 龍子
柩舟色なき風にめぐりあふ
一枚の鏡のなかに風の色
玄関の外は冬の蚊の異空 石川 順一
仕舞湯を冬の蚊と居てほうけたり ☆
琉球の話に鶴が飛び立てり
蝶一頭御嶽(うたき)の杜に冬近し 服部 一彦
箸置きに拾ひし珊瑚冬に入る ☆
鸇渡る風兆すかな宮古島
霧深く鞍馬に落つる時間かな ☆ 毬 月
菊の花毘沙門天に照らされし
霧深く降魔扇の風騒ぐ
秋桜や娘の子育てに笑み戻る 石田 桃江
竿さきの柿のまうえの真澄の空
歩み来て黄落を踏みしめており ☆
小便の音や三日月はるかなり 五島 高資
うなじから紅葉こぼれて星の夜
しわぶきの森のあたりを年ゆけり
原則として句稿到着順。 ☆は、五島高資推薦句。
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