俳句スクエア集・平成22年6・7月号

通 巻 81・82号



 ☆ 緩やかに回る輪蔵半夏雨        朝吹英和
   音階を走り抜けたる青蜥蜴
   短夜の針千本の孤愁かな
   短夜や鎖の切れし銀時計
   夏怒濤ニーチェの言葉諾へり
   七月の檻を破りし一角犀

 ☆ 一滴のさかのぼりゆく蛍かな        松本龍子
   吉野山空華のごとく咲きにけり
   天空の空を落とせり那智の滝
   万歳のザリガニの手に昭和の日
   真空を背中にのせて鮎走る
   棒一本のけぞっている薄暑かな

 ☆ 陽炎の音は翼をたたむ音        石母田星人
   幻想が齧られてゐる東風の海
   初虹や雄螺子雌螺子の皮膚呼吸
   青梅雨の森に尻尾を置いてくる
   虹の羽化見てゐる耳の形かな
   夏霧の欠片を包む無音かな

 ☆ 透きとおる蜘蛛の巣かかる鏡かな        加藤直克
   須弥山の裾野はるかに朴の花
   返信に赤き芍薬そよぎおり

 ☆ 虹出たと電話しようとしてやめる        生田亜々子
   らっきょうを剥けば生まれる恐怖かな
   積乱雲十七文字に収まらず
   青嵐思ひを口に出来る人
   椎の香に人知れず顔しかめをり
   からからのパン屑拾う五月かな

 ☆ 風の舌角なき朝や花菖蒲        津山 類
   タゴールにギタンジャリあり夏の月
   緬羊に応へて韮の咲きにけり

 ☆ 雲泥のあはひを濡らしつばくらめ        更 紗
   ジパングの花簪や夏つばめ
   十薬や卒塔婆のぞくブロック塀

 ☆ 赴任先夏夕焼けの果てしなく        毬 月
   ベランダで埃を落とす桜桃忌
   遠雷や電話の後のメールかな

 ☆ 葉桜や草がたくさん枯れて居る        石川順一
   蚊の飛行時々おかしな落下して
   歩きつつさくらんぼ食べ写真撮る

 ☆ 添い寝して欅のみどり六月来         珠雪
   はつなつや五か月の娘の寝返りぬ
   十七の子ら入壕す沖縄忌

 ☆ はや実むらさき色づくうつろへる日         石田桃江
   高砂百合に癒されている晩夏
   ずっしりと冬瓜抱きてたじろぎぬ

   渋滞やそばえて霓が虹を追う        五島高資
   将門やかわたれどきの土蛍
   驟雨来て下野薬師寺立つ如し


   都合により6月号と7月号は合併号としました。関係各位にはご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。なお、恐縮とは存じますが、8月号と9月号も合併号の予定となっております。〆切りは平成22年8月20日とまりますので、何卒、ご了承の程をお願い申し上げます。

   原則として句稿到着順。原句のまま。☆ 五島高資推薦句。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

   投稿規定 :  資格は特になし。
         〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
         平成22年8-9月号の〆切は平成22年8月20日。
         投句数は、一人5句まで。
         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
         次回の掲載は、平成22年9月1日頃を予定。
         投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。
         注・上記以外のアドレスへの投稿は不可。
         なお、必ず題名に「投句」と書いて下さい。

         また、俳句スクエア集に掲載された作品は、
         毎年度末刊行予定の年刊『俳句スクエア集』に
         入集される予定です。
         なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
         俳句スクエア集に掲載された作品とします。

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