俳句スクエア集・平成17年10月号

通 巻 72 号



銀河系の隅で電車待つ蟻群れり            吾 狼
知らぬまに括られ僕ら高層の百合
人逝きて青野に蝶の出ずる部位

秋涼のたてがみたつる子馬かな            露 壜
ひぐらしの切れ字のなかのひとりかな
鰯雲追ふ海豚雲ありにけり

望月や問ふて深まるきのふけふ            毬 月
収まらぬ喧嘩軒越え秋雨なり
餌よりも気になる秋よ動き出す

白日は逃れられずに原爆忌              斎田 茂
今同じ花を見つめて古代蓮
炎帝に息をひそめて戦国記

屋根石の少しずれをり夏の月             斎田 礼子
凌霄花咲くも落つるも紅ふやす
吐く息を煽ぎ秋暑の戦争展

赤まんま詠ふ我が心の屈折              広瀬 洋子
山荘を閉ぢてこの夏封印す
秋夕焼雲も家路をたどるらし

名号の巌の下の清水かな               服部一彦
水銀のうすうす流る秋津軽
緑林を辞めし漢ら秋仕舞

大仏のひとさし指を月に折る             猿 人
夕月夜器となりて江に浮く
月光や夜明けの森の非常口

稲妻と稲妻の間で旅終る               山戸則江
長き夜は貨物列車に繋がりぬ
居留地を三歩はみ出す竈馬

棒で撲てば花野は千の鈴鳴らす            加藤昌一郎
月を呼ぶ手の鳴るほうが花野にて
この冬瓜の中は妄語か真言か

名月へ向けてジャンボ機飛び発ちぬ          伊藤華将
病院の待合室に熱帯魚
秋の雲うしろは真青一色ぞ

エノラゲイペットボトルに沈みたる          藤代真路
秋来る車輪が跡を落としてく
複雑な彼を残して月が泣く

胎動は翅より薄く星月夜               石母田星人
掌紋の放つ惑星ねこじやらし
白桃を置く褶曲の天辺に

露の世に小刀当てて花折れリ             更 紗
吹き下ろす夕に青散る花野かな
藍染めの色なき風に染まりけり

一翰を届けにゆくや曼珠沙華             原 清水
夕月このいのちのごときもの泛かぶ
喪ひの列につく蟻炎天下

力尽くようにも見えず秋の蝶             菜月子
月白のテラスで友と書を語る
鹿の子に道をゆずられ夕散歩

シャラポワの吠える拳は椿の実            石田桃江
吾亦紅目にとまりたること願う
秋の蝶山のかなたへゆらぎ消ゆ

ひとやまをじわーんと蝉は無音なり          鈴木浮葉
蜘蛛の子の糸一条に巣立つ朝
足痛む人生無用の木の実雨

たっぷりと水含む空小鳥来る             小林 檀
水筒のからからと鳴る曼珠沙華
巾着に首の顕れ雁来る

子を抱きてコスモスの待つ我が家かな         珠 雪
産院を発つ母子前の稲刈り機
祖母の手やおろし金にて林檎の香

象潟やついに溢れるにわたずみ            五島高資
蛸壺の積まれて月に迫りたる
渋滞の先頭は枯尾花かな

                   原則として句稿到着順。原句のまま。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

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         〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
         平成17年11月号への〆切は平成17年10月20日。
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         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
         次回の掲載は、平成17年10月末日頃を予定。
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         注・上記以外のアドレスへの投稿は不可。
         なお、必ず題名に「投句」と書いて下さい。

         また、俳句スクエア集に掲載された作品は、
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