通巻69号
白魚の眼の幽かなり訃報来る 吾 狼
五月雨や列車撤去の虚しさよ
睡蓮の白映えマヌカンよりも映え
ビニールのなかに捕らえり虹ひとつ 猿 人
羊水の血のながれきく海の家
葉脈の乳房となりて夏の朝
あの頃の海滴らす花手拭 加藤昌一郎
おばさん達が来て重なり合って木下闇
腐りたい物が犇く机かな
郭公の声どこまでものぼりけり 露 壜
雷の住処へ伸びるレールなり
青胡桃水面の上の枝にをり
夕顔や海は語らうともしない 蓼
浮草に触れずして岸もどるなり
参考書選んだ頃の五月来る
田を植えし母の一生みどりなす 新井竹志
七十年を語れ生家の棗の実
郭公やこの声届けバクダット
声高に打ち込む竹刀さくらんぼ 伊藤華将
花菖蒲嫁入り舟に米俵
消えていく青空ありて梅雨きざす
夢を出て紋黄蝶が見る夢の後 服部一彦
夏暁船を並べて談合す
天文台のドーム開いて蠅の頭
蛍や闇に寂びしと乱れ文字 牛 若
月雲に入りて蛍のほしいまま
面子などとつくに捨てた冷奴
ベールとり熟し苺は小さい吐息 花 夜
嵐日は梅ようかんを大きめに
肩下がる息深くして薔薇のなか
維新後のヘリオトロープよく笑う 山戸則江
青蜜柑転がる革命はまだか
炎昼の天辺にある一軒家
日の暮れのまた暮れてゆき未草 更 紗
つる薔薇の蕾ほどけてG線上
十薬の殉教めいて吊られけり
少年老ゆ空のプールの暗き底 真矢ひろみ
うぶすなの海碧ければ夏立ちぬ
南国の魂ふるものに初燕
海鳴の抜け殻あまた谷崎忌 石母田星人
蓴採り鍵盤に刻満ちてゐる
星雲と触れ合うてゐる羽抜鶏
御鈴の音夜の青田の深さかな 原 清水
田蛙をばかり聞かされ新仏
釈名の汝と白飯頒ち合い
一人児の多き時代や韮の花 津山 類
紫陽花忌素通りしてもしなくても
半夏雨登り下りを違へけり
汗を拭き木陰に風の触れてをり 石田桃江
若竹の雨の音色を聴いてをり
咲き誇るさつきの庭の照り映える
ぱれすちな杏の中のほむらかな 小林 檀
水玉となりてバイエル麦の秋
朝顔や記録映画のコマ落し
春愁や石に紛るる鯉の色 斎田 茂
春昼や中を暗めし寝釈迦堂
ネクタイを固く結びて立夏かな
缶けりの缶のぽつりと春の果 斎田礼子
山車百台灯して月の欠け始む
鯉幟増えて隣家は声高に
黒潮を分ける島根や雲の峰 五島高資
右腕を枕に暮れて荻の声
天仙果ならその裏にたんとある
原則として句稿到着順。
投稿規定 : 資格は特になし。
〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
平成17年8月号への〆切は平成17年7月20日。
投句数は、一人5句まで。
掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。
なお、必ず題名に「投句」と書いて下さい。
また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
年刊『俳句スクエア集』に入集される予定です。
なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
俳句スクエア集に掲載された作品とします。
ご注意 : スクエア集係(squareshu@yahoo.co.jp)宛て以外への投句は無効です。また、掲載句の著作権は作者に存しますが、作者が「俳句スクエア」へ投句した時点より、出版権設定契約が成立し、掲載句の出版権は「俳句スクエア」に存することとします。
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