通巻67号
クロノスの鎌煌めくやリラの冷え 朝吹英和
アラビアの茶器ことさらに春惜しむ
四万十の水豊かなる花の夜
城門の重き軋みや其角の忌 斎田 茂
薄氷を踏みたき子供心かな
山里や科の妖しき土雛
ほつれ髪して古雛の遠まなこ 斎田礼子
麹室掃きたて杜氏鳥雲に
薄氷を履みて子役の名調子
夜桜のなかにうごめく周期表 露壜
花の宴花の色なる酒を酌む
流木にせきとめらるる花筏
サンディエゴ発の南風はエアメール 山戸則江
惜春す五分遅れの時計ごと
巡礼に立ちはだかっている毛虫
手枕の白さを言へるさくらかな 服部一彦
太古より黄韮束ねて少年よ
青雲の白きうからと墓を掃く
鳥交るフィトンチッドに心耳透く 蓼
引潮に乗つてゆきたき海市かな
花の夜齟齬を重ぬる二三日
竹の皮ころころ散りて土かをる 毬 月
なつてふの遠出してゐるやうなもの
のせたもののけて眺めし藤むしろ
花明り寄進瓦にわが名記す 牛若
花屑の雑草羽化縷縷如きかな
花吹雪いま結界に僧の見ず
梅ゼリー言葉と言葉が絡み合い 花夜
連日の森林浴に生気の声
一人身の女はひとり蛍食ふ
照星の中はいづこも桜かな 加藤昌一郎
眼つむりいるほかなし青みゆく電車
天女らの朧に落ちる無重力
散るさくら指にからまり貝となる 猿人
葉桜や星を抱きつつ揺れてをり
血管の液となりゆく春電車
夜桜の中シグナルの「歩く人」 原 清水
ふたつなきいのち醍醐のさくらかな
回転翼飛ぶ満開の花の上
くるくると寝返るややや寒戻る 節
ゆつくりと雲の流れて春動く
ぽつくりと芽を出したるチュウリップ
わが皮膚の下の髑髏や朧月 更紗
花散るや敏感肌のふたりゐて
口上の月代蒼き春の月
水牛も僧のかたちに霞みけり 津山 類
さわらびを弥勒のゆびと思ひけり
Mエンデの書読みて春惜しみけり
惜春のまんまん中の寝癖髪 真矢ひろみ
飛花止まず深山の魄に誘われて
幹黒く濡らしてゐたり暮の春
己が影忘れてきしか春の雷 白路子
猫柳フオッサマグナの石空川(いしうつろ)
チューリップ「命の電池」尽きし少女
ゆっくりと生まれるごとく春終る 藤代真路
生きながらなーんにもしないのをしよう
電車から木琴の音春近し
千鳥格子に鳥戻る夢朝寝かな 小林 檀
足首の傷に触れをりクローバー
左脚出したら右手夏立ちぬ
雪柳針の先ほど背伸びする 珠雪
つららにもなれず彼岸のひと雫
寝て起きてまるくなる午後春の猫
前庭のさくら満開ピアノ鳴る 伊藤華将
花冷えや音のはずれしバイオリン
雪形の木魂と遊ぶ月の山
花朧刻の継目の過りけり 石母田星人
意識下に染みこんでゆく春の水
末黒野の天心にある鑿のあと
白椿に魅せられ耳を澄ますなり 石田桃江
ほとばしる蛇口の井戸水春の昼
羊歯萌ゆるしばらくはこのままにして
菜の花の沖して蝶となりにけり 五島高資
カノープス蔵して竹の秋となる
栃の葉のかたちに栃の木が茂る
原則として句稿到着順。
投稿規定 : 資格は特になし。
〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
平成17年6月号への〆切は平成17年5月20日。
投句数は、一人5句まで。
掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。
なお、必ず題名に「投句」と書いて下さい。
また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
年刊『俳句スクエア集』に入集される予定です。
なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
俳句スクエア集に掲載された作品とします。
ご注意 : スクエア集係(squareshu@yahoo.co.jp)宛て以外への投句は無効です。また、掲載句の著作権は作者に存しますが、作者が「俳句スクエア」へ投句した時点より、出版権設定契約が成立し、掲載句の出版権は「俳句スクエア」に存することとします。
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