通巻66号
落第や急ぐことなき空抱いて 毬 月
行く先は風やはらかき百千鳥
口遊む欠伸してをり石鹸玉
終点の遠くにありし田螺かな 中原寛也
太陽、白菜抱いていたりけり
薄氷や駅舎は日の中に
手順通りキー打てば蛇穴を出づ 蓼
蛇出る行数足りぬ想ひかな
春の夜下巻繙く「ノルウェーの森」
芝さくら田おこし近きあぜに咲き 花夜
淡雪や潮流に落とすイヤリング
一人だけ冬の初めの夜が三つ
鳥帰る湖にいくつも翳残し 牛若
幾春を病むや見飽きぬ風見鶏
下萌やグランドゴルフと車椅子
重力と浮力の狭間亀鳴くと 朝吹英和
手掛かりのカタン糸から陽炎へり
空洞の青き十字架地虫出づ
ふらここや裏面の月のぞきこむ 猿人
春の空とけてながれり那智の滝
地球儀の回転止めし花吹雪
からくりの逆立ち北風を蹴り返す 斎田 茂
橋梁を走つて渡る北下し
北風吹くやどつかと座る孕牛
寒柝の消えて子をとろことろかな 斎田礼子
牡丹雪地につくまでの橋淡し
濯ぎかこちて夫が手の胼薬
朧夜の無人電車とすれ違ふ 露壜
約束の時の過ぎ行く春の宵
如月のホットケーキの焦げにけり
廬舎那仏東路在す春隣 服部一彦
寒禽の見やるは絹の来たる道
細雪脳味噌にまた嘘を足す
春宵は郵便ポストごと暮れる 山戸則江
そんな鉄塔どこにあったか花曇
壇ノ浦あたり生まれか蜆蝶
遠景や菫色の弥陀雲に入る 加藤昌一郎
ブランコを鎖でつなぎ皆帰る
霾や悲しき地名横たわる
きりもみの空気の薄き紅椿 津山 類
花御堂ひとうつくしくしたまへり
帆船の遠くかげらふ花篝
曼荼羅の暗きへ猫の恋のこゑ 伊藤華将
二礼二拍手春の夕日に佇めリ
目薬の鼻に入り来て花粉症
太陽をさへぎりしもの春のとり 原 清水
ひなあられ食べて雛の日と思ふ
はづかしき利息の数字虫出づる
補助線を虚空に引くや夕雲雀 真矢ひろみ
逆光の春野の中に迷ひけり
囀りや一塊の死を解析す
垂直に時を追ひぬく雲雀笛 石母田星人
春暁の複眼と化す潦
億の翅億の風生む涅槃光
日直の今日は早めに大根干す 藤代真路
自転車のチェーンはずれて帰り花
粘膜のたらりたらりと春の水
啓蟄や墓より深き地下の駅 更紗
喪の母の古き真珠や牡丹雪
春雷の阿吽の像の挟間かな
初雪の道の斑となる雀かな 君野蟠慈朗
若水やサプリ彩々手に零す
今年米低温貯蔵庫のハミング
白昼へ沈むピアノや白木蓮 小林 檀
万年時計の中へ消え行く春の水
をのこらのよくねむりをりちゅーりっぷ
暢思骨胸に鳥去る眠らねば 沙羅
詩はしずか詩論は熱しヒヤシンス
なぞなぞや視野に初蝶まもりつつ
雪窓に目をやり袴姿かな 珠雪
つららにもなれず彼岸のひと雫
買い置きのスニーカー出す春の足
春浅し色付く並木田舎道 節
春菊の香りまつはる土鍋かな
庭先に小鳥上下春来たる
畦焼の煙は北へ散りにけり 白路子
朧夜の新鮮すぎる寂しさよ
なつかしきはなしや蕗の花を和へ
大いなる孫の一歩や桃の花 石田桃江
ゆく雲を眺めて籠る春の風邪
ほつほつと芽ぶく気配の川柳
海彼など椿の葉巻燻らせて 五島高資
燃えつきてなお水晶や風光る
わたつみの道へと玉の浦咲けり
原則として句稿到着順。
投稿規定 : 資格は特になし。
〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
平成17年5月号への〆切は平成17年4月20日。
投句数は、一人5句まで。
掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。
なお、必ず題名に「投句」と書いて下さい。
また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
年刊『俳句スクエア集』に入集される予定です。
なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
俳句スクエア集に掲載された作品とします。
ご注意 : スクエア集係(squareshu@yahoo.co.jp)宛て以外への投句は無効です。また、掲載句の著作権は作者に存しますが、作者が「俳句スクエア」へ投句した時点より、出版権設定契約が成立し、掲載句の出版権は「俳句スクエア」に存することとします。
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Copyright (C) Takatoshi Gotoh 1998.3.1