俳句スクエア集・平成17年4月号

通巻66号



檸檬置く白き指先と鬱ひとつ             吾狼
流氷や傷はいつしか滑らかに
冬の日の優れものなる蒙古斑

落第や急ぐことなき空抱いて             毬 月
行く先は風やはらかき百千鳥
口遊む欠伸してをり石鹸玉

終点の遠くにありし田螺かな             中原寛也
太陽、白菜抱いていたりけり
薄氷や駅舎は日の中に

手順通りキー打てば蛇穴を出づ            蓼
蛇出る行数足りぬ想ひかな
春の夜下巻繙く「ノルウェーの森」

芝さくら田おこし近きあぜに咲き           花夜
淡雪や潮流に落とすイヤリング
一人だけ冬の初めの夜が三つ

鳥帰る湖にいくつも翳残し              牛若
幾春を病むや見飽きぬ風見鶏
下萌やグランドゴルフと車椅子

重力と浮力の狭間亀鳴くと              朝吹英和
手掛かりのカタン糸から陽炎へり
空洞の青き十字架地虫出づ

ふらここや裏面の月のぞきこむ            猿人
春の空とけてながれり那智の滝
地球儀の回転止めし花吹雪

からくりの逆立ち北風を蹴り返す           斎田 茂
橋梁を走つて渡る北下し
北風吹くやどつかと座る孕牛

寒柝の消えて子をとろことろかな           斎田礼子
牡丹雪地につくまでの橋淡し
濯ぎかこちて夫が手の胼薬

朧夜の無人電車とすれ違ふ              露壜
約束の時の過ぎ行く春の宵
如月のホットケーキの焦げにけり

廬舎那仏東路在す春隣                服部一彦
寒禽の見やるは絹の来たる道
細雪脳味噌にまた嘘を足す

春宵は郵便ポストごと暮れる             山戸則江
そんな鉄塔どこにあったか花曇
壇ノ浦あたり生まれか蜆蝶

遠景や菫色の弥陀雲に入る              加藤昌一郎
ブランコを鎖でつなぎ皆帰る
霾や悲しき地名横たわる

きりもみの空気の薄き紅椿              津山 類
花御堂ひとうつくしくしたまへり
帆船の遠くかげらふ花篝

曼荼羅の暗きへ猫の恋のこゑ             伊藤華将
二礼二拍手春の夕日に佇めリ
目薬の鼻に入り来て花粉症

太陽をさへぎりしもの春のとり            原 清水
ひなあられ食べて雛の日と思ふ
はづかしき利息の数字虫出づる

補助線を虚空に引くや夕雲雀             真矢ひろみ
逆光の春野の中に迷ひけり
囀りや一塊の死を解析す

垂直に時を追ひぬく雲雀笛              石母田星人
春暁の複眼と化す潦
億の翅億の風生む涅槃光

日直の今日は早めに大根干す             藤代真路
自転車のチェーンはずれて帰り花
粘膜のたらりたらりと春の水

啓蟄や墓より深き地下の駅              更紗
喪の母の古き真珠や牡丹雪
春雷の阿吽の像の挟間かな

初雪の道の斑となる雀かな              君野蟠慈朗
若水やサプリ彩々手に零す
今年米低温貯蔵庫のハミング

白昼へ沈むピアノや白木蓮              小林 檀
万年時計の中へ消え行く春の水
をのこらのよくねむりをりちゅーりっぷ

暢思骨胸に鳥去る眠らねば              沙羅
詩はしずか詩論は熱しヒヤシンス
なぞなぞや視野に初蝶まもりつつ

雪窓に目をやり袴姿かな               珠雪
つららにもなれず彼岸のひと雫
買い置きのスニーカー出す春の足

春浅し色付く並木田舎道               節
春菊の香りまつはる土鍋かな
庭先に小鳥上下春来たる

畦焼の煙は北へ散りにけり              白路子
朧夜の新鮮すぎる寂しさよ
なつかしきはなしや蕗の花を和へ

大いなる孫の一歩や桃の花              石田桃江
ゆく雲を眺めて籠る春の風邪
ほつほつと芽ぶく気配の川柳

海彼など椿の葉巻燻らせて              五島高資
燃えつきてなお水晶や風光る
わたつみの道へと玉の浦咲けり

                          原則として句稿到着順。


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