通巻64号
天地の重石となりぬ落椿 山戸則江
ガス灯はぼやっと北の匂いする
降る雪や人も兵器もみな覆え
寒々し庫裏に二本の蛍光灯 斎田 茂
人力車手持ち無沙汰に十二月
日めくりの待ったなき日や冬帽子
父の忌や牛の眸に時雨雲 斎田礼子
埒も無く石投げてみる寒の池
冬帽子煤けて父の貌かたち
蟾光を湛へし甕や背美鯨 石母田星人
曼衍や寒三日月に棲む谺
初明り無功用の尾の現るる
鶯や突き抜けてくる汝の訃報 猿人
伊勢海老や白い地球をはきだせり
それぞれに鎖ひきずり初暦
荒涼とポストの咥へおりしもの 原 清水
鶏頭花きのふに今日を重ねたる
道路鏡新成人のまず過る
古き耳なげうてば飛ぶ淑気かな 加藤昌一郎
微熱かなゆうべの火星まだ匂う
狐に摘まれしところの潤みおり
青い地球赤い月とも懐炉もむ 服部一彦
紅葉をころげまはりて恋知らず
蕎麦刈るや潮の差しくる古鳥居
白菜を持って大いに笑うなり 藤代真路
淑気満つ今日の大地の埃にも
初雪や残る分だけ塵となる
冬の日の影をのみこむ摩天楼 露 壜
眠らぬといふ街はるか山眠る
蝋梅のひともと透かし筑波山
空也には恋する仏五六人 津山 類
青のないクレパスくれる梅の冬
切り絵の目どこ迄青い冬木立
主より烏が先に初山河 毬 月
うつうつと富士頷きて旅始
校庭の錆目深なる冬日向
ややの眼のキラキラ光るクリスマス 節
雪掻きの朝の挨拶シャベル立て
行く年の日めくり暦薄くなる
木枯らしや閨に放たる静電気 更紗
金座銀座行方知れずの寒昴
初雪や慥かにありし江戸の町
白木蓮ツメ伸バシテハ空ツカム 珠雪
やかん鳴る大寒の日の朝の音
センター試験という荷を下ろす睦月かな
雪女郎いるかもしれぬ下駄の跡 作田由加子
酒匂ふお蔵座敷に龍の玉
沖縄と指さす方は牡丹雪
冬の芽の百年うそと思われる 中原寛也
水仙や兄弟ひとりいるけれど
大寒や夕煙突の先細る
浮き沈む豆腐のかけら冬銀河 真矢ひろみ
友死して後凍蝶の懐かしさ
摩天楼に冬雑木の枝手折る
アヒル母子の啼き声に声かさね 花 夜
寒朝や粥をすするを見届けて
七草や母の教えをそらで言う
冬籠り鋏に金と銀の鈴 小林 檀
指先の余る手袋鶏鳴けり
羅和辞典開きし指に雪のにほひ
火柱に血の騒ぎたる野焼かな 石田桃江
ココア飲む羊日の家がらんどう
椿食む鳥はなにいろに染まるかな
ここにゐるわたしがまこと龍の玉 白露子
枯滝の音なき音や龍の玉
龍の玉一番星の顕ちにけり
吹きおろし白を真白へ吹雪けり 伊藤華将
風説を火矢の射ぬきて曼荼羅絵
年明ける吾れ六十五母米寿
思うほど遠くなき空梅ひらく 沙羅
つばさあるやうにふらこここいでをり
マフラーやわが横着の首括る
原則として句稿到着順。
投稿規定 : 資格は特になし。
〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
平成17年3月号への〆切は平成17年2月20日。
投句数は、一人5句まで。
掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。
なお、必ず題名に「投句」と書いて下さい。
また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
年刊『俳句スクエア集』に入集される予定です。
なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
俳句スクエア集に掲載された作品とします。
ご注意 : スクエア集係(squareshu@yahoo.co.jp)宛て以外への投句は無効です。また、掲載句の著作権は作者に存しますが、作者が「俳句スクエア」へ投句した時点より、出版権設定契約が成立し、掲載句の出版権は「俳句スクエア」に存することとします。
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