俳句スクエア集・平成16年11月号

通巻61号



いくたびも曲がれど柿の背戸なりぬ         露壜
ブロンズの母と子おはす花野かな
雨煙る古城の堀や金木犀

コスモスやしばらく船に乗らざりし ☆       由加子
マンボウの顔平らなり秋日和
幾千の蝗飛び交ふ日曜日

林檎の皮どこまで垂れ下がりゆく夜か ☆      加藤昌一郎
人も星も終わりは炎曼珠沙華
長き夜や眉月乗せる天秤座

ただならぬ音となりゆく今日の月          桜川こういち
音量を徐々に下げてる秋の暮
流星や嵐の急所貫いて

てのひらの月の水なる蒼さかな           猿人
初紅葉しばらく君の声を聴き
さわさわと薄のなかを鯨とぶ

コピーから一枚が抜け蔦紅葉 ☆          山戸則江
矛先の吸い込まれたる秋の空
嘘八百回つくよりも女郎花

かたまつていよいよ暗し曼珠沙華          服部一彦
栗はむやいつまでありし蒙古斑
中庸とは耳順とは岩魚沈む

落暉てふ火玉の重し芒原 ☆            斎田 茂
秋蝶や路地を狭めし植木鉢
田一枚泥に浸りし稲穂かな

塩の道それてよるべのなき薄            斎田礼子
棟札の墨は武骨に秋暑し
新涼の飯の香尼の影一つ

大根を見ている今日も揺れている ☆        中原寛也
スケッチの少年 くねる秋思道
不自然なサルビア誰か隠してる

くつわ虫鉱石ラジオ・ジャズ流る          伊藤華将
墓守の銀の煙管や酔芙蓉
鵙猛るチューバ抱へし女高生

月まどか犬の鼓動を抱きしめて           えんやま福
満月に遠吠えをするのど仏
蕎麦の花くちあらそいて農夫婦

黒鍵の間に置きし唐辛子              小林 檀
飽きられし人形の四肢黄落す
お茶会の約束忘れパンジー植う

膨らんだ空気の中に野分あり ☆          藤代真路
荷台から秋の日差しが落ちてくる
追いかけてまた残される秋の時

群れてきて石にかみつく秋の蝶 ☆         垣内 花
抜き足で夢を殺しに金木犀
大杉を支える絶壁釣船草

ブルースのふと歪みいる月の雨           更紗
残月や静かの海の星条旗
黄落の街の暖色マチス展

遠出すでに罠でしょう花すすき ☆         沙羅
時雨忌の辞書たらたらと鳴らしけり
木の実独楽いつか己を励まして

ナウマン象の肋を通る秋の風            津山 類
恐竜の咽長かり月の暈
神無月花屋のまえを通るたび

故郷を真赤に染し彼岸花              節
啄木鳥の暁ごろに木を叩く
秋の蝉虚しく鳴くや孫眠る

式部の実束ねし色の零れゐし ☆          白露子
掃きよする箒の微風冬の蝶
たらちねの卒寿の一日返り花

蓬莱をめざす石笛銀河濃し ☆           石母田星人
魚哭けば體内に月満ちてくる
目頭に野分の兆し甘露水

   

               原則として句稿到着順。なお、☆は五島高資の推薦句。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

   投稿規定 :  資格は特になし。
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         平成16年12月号への〆切は平成16年11月20日。
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         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
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