俳句スクエア集・平成16年9月号


瓜冷す水に映りし孤心かな ☆           朝吹英和
河骨や死者の視線を遮りぬ
決然と走る少年銀河濃し

とりとはなきらきらひかってまもってる       小林こだん
せんぷうきとりみたいに火をあける
ちょうちょがねポットあけたらでてきたよ

考へのまとまらぬまま乗る揚羽 ☆         服部一彦
回り道寄り道しても金魚ひとり
シンドバツド雲の果てよりひろしま忌

分離帯の赤き点滅夜はみどり            君野蟠慈朗
炎帝や世論調査を拒否される
自販機の缶の彩り遠花火

青空をすくってばかり捕虫網            露壜
青北風やでいだらぼっちの大欠伸
秋の蝉木霊となりて消えにけり

月光や砂丘のごとき乳房かな ☆          猿人
沈黙の沸騰するや原爆忌
秋麗神の船にて目覚めけり

折鶴を潰せば秋の夕焼けかな ☆          真矢ひろみ
ふところの深き影あり夏木立
夕花野生の円周率測ろ

約束の地などあらざり天の川            更紗
やうやうと陽は傾きぬ蝉時雨
道行は水の底まで泡立草

夏空へ雲の湧き出る休火山             宏子
素潜りの出来ぬわたしよ水中花
砂浜の葺簀囲いへ晩夏光

瑠璃色をゆらしてをりぬ金魚かな ☆        小林 檀
八月九日ロシアンティーの底真っ赤
流星の尻尾にゆわく刺繍糸

線香花火の泪が落ちて父祖の闇 ☆         加藤昌一郎
蟻湧かす石より馬頭観世音
阿武隈や触れれば怒るはたた神

声紋につづき銀河の出てゆきぬ ☆         石母田星人
宵闇は右巻の渦耕衣の忌
晩夏なり天の浮島より頤

裏側で呼吸している夏の足 ☆           藤代真路
知らぬ間に路に迷って蛇苺
あさはかにとろけてしまう夏の蝶

蜩の神の火入れを待ちにけり ☆          白露子
シテ退ける銀河の端の鏡の間
結界の池の鯉とも薪能

神田川びわの葉光りヤジロベエ           津山 類
ヤドカリの主を探せり天の川
深井戸に竹簾滴り蓮の花

慕われて人生閉じし白障子             白梅
雪女ただひたすらに皿洗い
山桜滝のように流れ咲き

夏帽子月に並べて干しにけり ☆          沙羅
晩学やおまけの金魚灯にあそぶ
幾尋を澄ますや湖の蝉しぐれ

竜淵に縄文人の虫歯痕 ☆             斎田 茂
万灯の怪しく燃えて峡の夜
賽銭の墨の薄れて秋の風

山のもの増えて小鳥の翳あまた           斎田礼子
少女期はるか秋の野のあれもこれも
檜丸ごと狛犬の眼の爽やか

穴という穴埋め立てて九月尽            山戸則江
満月の夜群れたがる娘たち
半鐘を聞いた気がする秋の暮

夏野来て山に抱かる微笑仏             作田由加子
夕闇に羽黒蜻蛉を放ちけり
一日の始まりを聞く蝉時雨

               原則として句稿到着順。なお、☆は五島高資の推薦句。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

   投稿規定 :  資格は特になし。
         〆切は原則として毎月20日、その翌月号に作品3句を掲載。
         ただし、平成16年10月号への〆切は平成16年9月30日。
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         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
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         また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
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