俳句スクエア集・平成16年6月号


陽炎のみなもとにある犀の角 ☆          石母田星人
幻日へ山気を運ぶがうなかな
菜の花や羽化の始まる水の星

蛍火や一期は夢よただ狂え             猿人
短日や人間らしくやりたいな
さくらんぼ甘い言葉がたりません

船乗りが真珠差し出す夏木立 ☆          服部一彦
射干玉の夜を割り素馨と黒巻毛
散る薔薇の秋波に遭ふ微風かな

神体を岩に涼しく祀りたる             斎田 茂
木の椅子や男のどけきハーモニカ
葺替への人の落ちさう遠伊吹

大仏の肩の高さに新樹光              斎田礼子
磧石ぴょんと少女の光ゲうらら
からかさを干して女の翳薄暑

虹霓を飼う金魚玉孕むべし             加藤昌一郎
蛭子去り沖には鰐が島を成す
闇に咲く黒き牡丹の長谷を恋う

蜂蜜の混ざらない音ついりかな ☆         毬月
背表紙の背丈揃えて夏の星
裏口で悪口吐ひて七変化

石けんの匂ひ残して五月来る            伊藤華将
夏めくや歩行天国飴細工
地下鉄の座席の帽子つくしんぼ

立夏たりユニクロに立つ父の霊 ☆         真矢ひろみ
薄化粧の兄引きこもる修司の忌
父ひとりリビングにゐる五月闇

マドンナと呼ばれてはにかむミニトマト       花夜
隣り合う車中の無言絹てぶくろ
右側そっとやあなたはクイーンマーガレット

麦秋やノブの指紋を拭きにけり ☆         津山 類
椿落ち空白の手をみたしけり
足元に蛭がゐるなり聖五月

ままごとのひかりの広間夏つばめ ☆        沙羅
置き去りし母へ千たび虹生れよ
空の水位すこしずつ濃くプール張る

つばめつばめ濁らぬ空を見てきたか ☆       小林 檀
西からの手紙届く日薔薇匂ふ
黒揚羽引力重力振り切りぬ

箱庭やしまひ忘れし月の影 ☆           白露子
現しみのラスコリニコフの白夜かな
獏眠る白夜の街にさまよひき

染卵籠に並べてイースター             節
手で包むコーヒーマッグや花の冷え
真っ白に小池を埋めるや花筏

ぼんやりがほうほうと鳴る梅雨の朝 ☆       藤代真路
網膜で眠ってしまう夏の月
二階より見ゆる青葉の雨ながれ

青梅をかじれば風の青さかな            露壜
サイダーの王冠あの日金バッヂ
王様はまだ決まらずや青蛙

万緑やガンジス流れるポップチューン        桜川こういち
薫風や青空に足ふみいれて
大空を四角に切りとる夏初め

                  原則として句稿到着順。なお、☆は五島高資の推薦句。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

   投稿規定 :  資格は特になし。
         〆切は毎月20日として、その翌月号に作品3句を掲載。
         平成16年7月号への〆切は平成16年6月20日。
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         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
         投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。

         また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
         年刊『俳句スクエア集』に入集される予定です。
          なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
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