俳句スクエア集・平成16年5月号


菜の花の呟きピアノピアニシモ           朝吹英和
遺伝子の記憶の底に春の水
雲梯に下がる道化師犬ふぐり

ひとひらの桜とともに夢醒めぬ           露壜
幽界へ続く夜空の花篝
淡雪や背戸の蕾の赤々と

見上ぐれば船の行き交ふ花の空 ☆         服部一彦
花の塔扉閉めても護摩匂ふ
一本の河津桜の海の駅

花弁のお守りを買ふ朧かな             作田由加子
月山を越えて花見に行く日かな
名も知らず摘みて帰りし菫草

花吹雪円周率を口ずさむ              猿人
透き通るガスの炎や桜狩
見上げれば空に逃げゆく花吹雪

菩薩をば家に連れ込む花明り            津山 類
春の塵不作法を謝す魚かな
葛餅の透明かげん蜜かげん

薔薇のようと褒められている椿かな ☆       加藤昌一郎
土筆生うクローン仏も何気なく
結界に花食む僧と花を食む

図書館のハ行の書棚鳥雲に ☆           伊藤華将
桜満開ジグソーパズル出来上がる
ゆらりつら轆轤に座る弥生かな

鐘楼の静寂に吊らる朧かな             斎田 茂
雪洞の朱染めの城や花筵
椿満々招かれて庭の中

蒼天を恋ひて桜と亀の首 ☆            斎田礼子
飛花落花雨を淋しむ筵かな
椿見に来よ紅椿白椿

花明り明りとなりしはかなさよ ☆         藤代真路
心中をありありと見る櫻かな
一昨年の葉桜にまた会いに行く

星空に咲きほころぶや紫木蓮            節
街の灯をゆらゆら揺らし春の川
染め卵籠に並べし春の雪

行く春やへゴの吐息を浴びてをり          小林 檀
道化師の無口なりけり黄水仙
くるくると回る遊びや初燕

春月や堕ちるものみな縁取らる ☆         真矢ひろみ
生者亡者みな臥しゐたり花筵
花透くや母胎の中のうすあかり

ひらひらとりぼんかがやくうみのむこう       小林こだん
あめにもまけないかぜにもまけないいろんなこといっぱい
よわがりはへんだぞへんだぞなんにもない

振り返る空は今でも鼓草              毬月
帰るとも帰らないとも心太
夏帽子挨拶忘れ母見上げ

壱年のハレとケ放ち櫻咲く             更紗
春色の裄丈巾を吊るしけり
写真には未だ満開の桜かな

精神を満たすは言葉さくら酒            花夜
ある朝にすっと往きたる父土筆
雪やなぎ義母がすするやミルク飯

山降る神の樅の木胡蝶かな             白露子
残雪の光る連嶺おんばしら
神となる樅を渡せり雪解川

なまぬるき春暁を脱ぐ大鎧 ☆           石母田星人
白梅が扉を開く真昼かな
わたくしの体に棲むと云ふ桜

立たすごと喪服吊りをりさくらの夜         沙羅
逸したるものポケットに罌粟の種
安達太良と不意につながる青嵐

                  原則として句稿到着順。なお、☆は五島高資の推薦句。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

   投稿規定 :  資格は特になし。
         〆切は毎月20日として、その翌月号に作品3句を掲載。
         平成16年6月号への〆切は平成16年5月20日。
         投句数は、一人5句まで。
         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
         投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。

         また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
         年刊『俳句スクエア集』に入集される予定です。
          なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
         俳句スクエア集に掲載された作品とします。

  俳句スクエア集・バックナンバー

   ご注意 : スクエア集係(squareshu@yahoo.co.jp)宛て以外への投句は無効です。また、掲載句の著作権は作者に存しますが、作者が「俳句スクエア」へ投句した時点より、出版権設定契約が成立し、掲載句の出版権は「俳句スクエア」に存することとします。

                         


「俳句スクエア」トップページへ

E-mail haiku_square@yahoo.co.jp

Copyright (C) Takatoshi Gotoh 1998.3.1