俳句スクエア集・平成16年3月号


調弦の揃ふ束の間亀鳴けり ☆           朝吹英和
かたかごの花と椅子取りゲームかな
煌くは愛の楔ぞ春の雪

帆船がカステラ積んで春の海            加藤昌一郎
邯鄲で寝かせておけや春炬燵
結石が黄泉平坂初下り

行く春や涙止まらず骨をのむ            猿 人
ゆらゆらと仮寝の犬や山笑う
どうにかして海に行きたい花吹雪

日脚伸ぶ振り子傾き逆上がり            轟 俊
菜の花や白き帆揺れる浜に揺れ
紅梅や激変緩和ユビキタス

七種や海がはぐくむ泡幾つ ☆           服部一彦
眠る山も煙おんおん吐きつづく
御代の春天心すでに遠くあり

梳る髪の重さや春の月 ☆             露 壜
ブランコの揺るるがままに影法師
春光や少年野球のユニフォーム

冬の色真っ白にして声は無く            花 夜
サウンドミュージック泣いて笑って福よこい
雪かきや高き影にも人そろい

点滴の涙に映す春夕焼け ☆            銀 河
菜の花や喫水深き油槽船
渋滞の高架道路のおぼろ月

二月去って短い枝のミモザ買う           珠 雪
チューリップ蕾に秘めたる色はなに
バレンタイン売り場で迷うのも愉し

かんばせの透けて虚ろにガラス雛          斎田 茂
甲冑の鎖重たき余寒かな
春めくや抱きし嬰は胸の内

飾り焚き松の容に火の熾り ☆           斎田 礼子
立春や方位仔細に二の丸図
雪女風に縋れば風の泣き

マレビトを待つ末黒野の端っこに ☆        真矢ひろみ
天の日に逆らひ昇りゆく鷹よ
馬の瞳の冬日は薄く溢れをり

にんにくの葉っぱとなって人をみる ☆       藤代真路
青空や青くなるまで会いに行く
冬天よ吾子の寝息のなさるまま

瞑目の耳に冬萌入りくる ☆            石母田星人
鱗粉が降る寒凪の裏側に
黄道を彷徨つてゐる雪兎

一束と言ふても太き葱二本             伊藤華将
辻社石座りおり龍の玉
風唱ふ越前岬野水仙

お星さまお風呂に入って溶けちゃった ☆      小林こだん
お星さまお風呂に入ってビスケット
パンジーさんお水をかけたらねんねした

幼木にまだ向きなくて風光る            沙 羅
囀りて詩人の墓と知りたるや
魚服記を閉じて開くや春の脳

あふるるまで卵泡立て蝶生まる ☆         小林 檀
さえづりの骨から骨へめぐりをり
寒明けや貝の釦に海の色

見え隠れサクマドロップ春の空           毬 月
頬杖が頬杖ついて遅日かな
むつかしきかをほころんでほうほけきょ

蝋梅の花の跳ねたる土星かな            白露子
みちゆきを脱ぎ囀りの零れけり
針納め豆腐に深き針の跡

赤で待つパノラマ白山空淡し            白梅
のきつらら姿見えねど水ぽとり
潮風がついに手に取るパンドラの桃

                  原則として句稿到着順。なお、☆は五島高資の推薦句。


   俳句スクエア集では、皆さんが投稿された俳句を月ごとに掲載致します。

   投稿規定 :  資格は特になし。
         〆切は毎月20日として、その翌月号に作品3句を掲載。
         平成16年4月号への〆切は平成16年3月20日。
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         掲載の可否は、「俳句スクエア」編集部に一任。
         投句は、俳句スクエア編集部・スクエア集係 へ。

         また、俳句スクエア集に掲載された作品は、毎年度末刊行予定の
         単行本『俳句スクエア集』に入集される予定です。
          なお、俳句スクエア賞・同新人賞への応募作品の過半数は
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